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聞こえた?と、フランソワーズが尋ねた。
僕は、首を右へと静かに一度動かした。
「そう・・よね、」
「ごめん」
「ううん、私の方こそごめんなさい」
彼女の耳に聞こえても、僕には聞こえない、何か。
その何かは、本当に”聞こえた”音なのかどうか、不安になるときがあるみたいだった。
「何が聞こえたんだい?」
日常生活に支障があるほどではないけれど、遠くの音に反応してしまう仕草は、ときおり”理由”を知らない人々に誤解を招くときがある。
「たいしたことじゃないわ」
僕は、不謹慎にも不安げにほほえむフランソワーズが好きだ。
その不安が、僕と彼女を繋いでいるように思えるから。
「そっか」
「ええ」
「うん」
「ねえ、ジョー」
「・・・なんだい?」
「この間、歌ってくれた日本の、歌、歌って?」
「いいよ」
End.
雲に覆われた空が鈍くオレンジ色を滲み出す)し出す。
リビングルームを照らすルームライトが、痛いほどに明るい。
覚めてしまった珈琲ののこりをすすった。
「雨がふりそうだね」
end.
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